シングルマザーだって起業を実現

インタビュー

子どもを育てるには稼ぐしかない
現実が私をアクティブにした

泣いたり恨んだり、くよくよする時間はなかった

 大学卒業後、わりとすぐにアメリカ人のパイロットと結婚。でも、約6年前、娘が就職して間もなく、息子がまだ大学在学中に離婚しました。離婚を告げたのは夫のほう。「結婚したい女性がいるから、離婚してくれ」と。
 もう、人間不信に陥りました。いや、夫の浮気はそれ以前にも何度かあったんです。よりによって私が子宮筋腫の手術をした日、「仕事」と嘘をつき女性の家へ行ったりね。けれど、浮気が発覚するたび夫を許し、添い遂げる道を選んだ。それなのに……私の半生、なんだったの? です。
 とはいえアメリカでは、夫婦のどちらかが離婚を決意したら、もう片方は反論不可。離婚以外の選択肢が存在しない仕組みになっている。しかも、慰謝料は発生しません。財産分与はあっても、今後の生活を考えるのに必死で、泣いたり恨んだり、くよくよしている時間はないんです。
 子どもたちは、家族が大好きでずっと一緒に仲良く暮らせるものだと信じていたため、当初はとてもショックを受けていました。けれど、最終的には「若くして結婚、パパに尽くして自由がなかったのだから、いい機会。これからは自分の人生を楽しんで」って。
 離婚後、アメリカでの居住も考えましたが、同時期に日本でひとり暮らす母が病気になったのもあり、帰国を決意しました。そして、日本でアパレルの会社を起業。
「やってダメならやめればいい。やらなきゃ何も始まらない」という精神で(笑)
 実は、アメリカ在住中も、子どもの手が離れた頃から「お小遣い程度に稼げて、楽しめれば」と気楽な気持ちで、欧米のファッションを日本のセレクトショップに卸す仕事を手がけていました。ただ、同じアパレルとはいえ、改めて日本で起業すると、すごいカルチャーショックに襲われた。
 まず、出生が東京なのに働いている知人はゼロ。頼りになる伝もなく、異業種交流会などいろいろな場所へおもむき、ビジネスでつながれる人脈を築くところから始めたんです。
 でも、普通に仕事の話しをするだけで「女のくせに起業なんて、生意気だ」。また「結婚しているの? あっ、こんなこと聞いたら『セクハラ』だ。アハハ」なんて。
アメリカだったら、逮捕だぞ! といったレベルの嫌な発言を浴びせられ、「他の女性には言わないほうがいいですよ」とキッパリ注意した場面に何度遭遇したか……。

迷ったり失敗を恐れたりの前に勇気を出して一歩踏み出す

 さらに、日本人は、はっきりと意思を言葉にしないから、言っている意味がよくわからなくて。例えば、「社に持ち帰って、上司と相談します」を、私は本当にそうしてくれるものとばかり思っていたら、社交辞令で「お断り」の意味を持つケースもあるという。
 孤独だし戸惑いばかりだし、日本から逃げ出したくなった日は、一度や二度ではありません。それでも踏みとどまり諦めずにいたら、徐々に手応えも味わえた。仕事に没頭、月1休むだけの生活を続けて倒れ、娘に「いくら仕事が好きでも、死んだら元も子もないよ」と呆れられるほど、日本での仕事を愛せるまでになりました(苦笑)
 現在は、起業を目指す方などにアドバイスするコンサルティング会社も経営しています。クライアントにはシングルマザーも、いらっしゃる。起業すると厳しい現実も山ほどありますが、子どもを育てるためには稼ぐしかないですよね。これも日本人の気質ですけど失敗を恐れがち。ですが、「 上手くいかなかったらどうしよう… 」と迷う前に勇気を出して一歩踏み出して欲しい。
 私はよく、「あなたは強いから、アクティブに生きられる。私には無理」と言われます。でも、それは違う。強くなくても、老後、子どもに迷惑をかけたくない。だから、ひとりで生きる術をひとつひとつ地道に身につけているだけです。今もなお、新たなビジネスを模索中なんですよ。
 

Profile

鈴木亜子
GLOBAL SUMMIT OF WOMEN 2015~2019の日本代表
株式会社ARiNa代表取締役社長
クリスタルボディジュエリーデザイナー

ピックアップ記事

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。